滝千春は2010年11月5日にシベリウスの協奏曲を沼尻竜典氏と東京フィルハーモニー交響楽団と共演します。
公演を前にインタビューを受けました。
Q:将来もっとも期待できる新星ヴァイオリニストの一人として注目を集められ、精力的に活動なさっていますが、滝さんにとってヴァイオリンの魅力とは何ですか。
滝千春:ヴァイオリンの魅力はひとことでは言いきれませんが・・・。
ヴァイオリンに限らず弦楽器というのは、人の歌声と直結しているように思えてなりません。
ヴィブラートという技法がありますが、私はいつも、オペラ歌手だったらどのようなヴィブラートを使い歌うだろうと考え、それを参考にして楽器の音色にしています。
木との振動で生み出される弦楽器の音はとても温かみがあり、血が通っています。
そんな魅力に私はいつも胸が高まります。他の楽器の音楽家さんたちには怒られてしまいますが、弦楽器は人のハートに一番近い楽器なのではと、感じることがありますね。
5歳から始めて、それ以来ずっと今までヴァイオリンとの生活をしてきましたので、体の一部といっても過言ではなくなっていますね。しばらく弾かないことがあれば手に違和感を覚え、痛みさえ感じてきます。弾かないことが不自然になった今では、もう欠かせなくなっていますね。
Q:将来、どんなヴァイオリニストになりたいですか。また、憧れている演奏家はいらっしゃいますか。
滝千春:漠然とした表現になってしまいますが、「愛される音楽家」になりたいですね。ナンバーワンじゃなくてオンリーワン、なんてフレーズがありますけれども、まさにそうなりたいです。自分が好きなこと、興味があることには挑戦していって、自分なりの音楽ライフを見出していき、それを好んで見てくださる方が増えていってくれたらと思います。それが私の将来理想とするヴァイオリニストですね。
憧れる演奏家というのもなかなか難しいのですが、例えば樫本大進さん。
幼いころからソリスト活動を続けていき、最近ベルリンフィルハーモニーでコンサートマスターに就任したとい大きなニュースがありましたが、私はなんて素晴らしい事なのだろうと思いました。彼がコンサートマスターになるといのは、どこか腑に落ちましたし、それができる自分に気付いた彼自身が、私はほんとうに素敵だと思いました。
要するに、だれだれの演奏に憧れるというより(もちろん私が好きな演奏家の方は沢山いますが)、世界で活躍されている演奏家たちが、それぞれ自身で可能性を見出し、活躍の場を広げているという様に、私はとても憧れます。
Q:シベリウスの協奏曲についてについてお話ください。
滝千春:これは、シベリウスの唯一の協奏曲で、今日沢山の演奏会でこの曲が弾かれています。
この曲の最大の特徴は、協奏曲でありながら、交響的であること、そして交響的でありながら、室内楽的でもあるということです。
ヴァイオリンの独奏ではありますが、オーケストラと対等に設計されているのが魅力です。
私はアンサンブルが大好きなので、オーケストラとのやりとりの楽しさを、この曲でいつも感じています。
あとは一楽章にあるカデンツァ。カデンツァというのは普通、その楽章の元となるフレーズやテーマを再現し、アレンジして設計されるものですが、このシベリウスのカデンツァは、主に今まででてこなかったフレーズで構成されています。
カデンツァとして独立していて、新しいひとつのドラマにもなっているようです。
人の心に直接訴ってくる美しいメロディーも沢山ある素晴らしい作品なので、是非聴いてください。
Q:今後の演奏活動の予定などについて教えて下さい。
滝千春:2011年の夏に、意外にチャンスにめぐり逢えなかったモーツァルトのコンチェルトを大阪で弾かせて頂けることになりました。モーツァルトと真剣に向き合える機会をいただけてとても嬉しいです。
今年の11月では、シベリウスの演奏会を終えた後すぐにパリにて、ピアニストの上田晴子さんとの共演させていただくことになっています。上田さんは私の憧れのピアニストでもあるので、心から楽しみにしています。その上田さんとの共演もそうですが、私はアンサンブルが大好きなので、ピアニストとの共演でヴァイオリンソナタを演奏していけたらと思っています。少しづつ、新しいことに挑戦していきたいと思っています。
≪公演情報≫
2010年11月5日[金曜日] 18:30開演(18:00開場)
京葉銀行文化プラザ 音楽ホールアクセスマップ
指揮 : 沼尻 竜典 / ヴァイオリン : 滝 千春
管弦楽 : 東京フィルハーモニー交響楽団
⇒ http://www.tpo.or.jp/concert/detail-1905.html